高遠・山室鉱泉
はじめて高遠を訪れたのは、1974年7月のはじめでした。
目的地だけを決めて伊那までは汽車で
そこからバスで高遠へ入りました。
土地の人に、絵を描きに来たのだけれど・・と
旅の目的を話しながら、その日の宿を相談すると
少し離れてはいるが、と案じながら
自然の真っただ中にあるという
「山室鉱泉」を紹介してくださいました。
「山室鉱泉」は、ご夫妻で経営されているということでしたが
本当に静かな所にありました。
ご主人が宿の前の畑を耕されていたこともあって・・
食卓にのぼる野菜のほとんどを作っていらっしゃるとのことでした。
お風呂場は、渡り廊下で母屋とつながっていました。
はじめて行ったのは夏でしたので、
素通しの廊下で、いろいろな虫と出会いました。
その次は10月の末・・
木枯らしのような強い風が吹いていて、
渡り廊下には木の葉が舞っておりました。
とても寒い日でしたので、ぬくぬくの炬燵から離れがたく、
夕食も就寝もおこたの中だったことなど
懐かしい思い出が残っています。
その折々、
宿のご主人がマッチ箱に書いて下さった簡単な地図をたよりに、
川辺部落、原、新井などあちこち歩き、絵を描いておりますので
ここに、そのうちの何点かを紹介いたします。
絵の題名についての記述が見つかりませんでしたが
「高遠風景 4F」の記録写真が残されておりました。
また、「山室鉱泉」で紹介していただいて
「元酒屋旅館」に泊まった時もありました。
江戸時代から続くというその宿は、
玄関、母屋など、古風豊かな木造建築で見事でした。
元酒屋旅館の近くで描いた渓流の絵